・雇用促進税制
平成23年度税制改正として、遅ればせながら一部が平成23年6月30日に交付されました。
その中に、新たな制度として雇用促進税制というものがあります。
この制度、一言でいうと税額控除制度です。
つまり、ある一定の条件を満たせば、本来納める法人税から一部の金額が控除できるという制度です。
簡単にいいますと、一定以上の従業員が増加した場合には、一人当たり20万円の税額控除が受けられるというものです。
詳しい要件は以下のとおりとなります。
・前年度末日と当年度末日を比較して、雇用増加割合が10%以上増加していること。
・雇用増加人数が2人以上(大企業は5人以上)であること。
・前年度及び今年度に事業主都合による離職者がいないこと。(解雇した人がいないこと)
・人件費が一定以上増加していること。
・風俗営業等適用除外業種ではないこと。
ここでいう雇用増加は、雇用保険の一般被保険者の数の増加を意味します。
従って、正社員の新規雇用のみならず、今まで雇用保険に加入していなかった者(パート、アルバイトなど)の雇用保険への加入も雇用増加に含まれます。
例えば、小売業を営む中小企業で、前年度末の雇用保険加入の従業員が10人、当年度末の雇用保険加入の従業員が12人の場合。
雇用増加割合は20%で、増加人数は2人になります。
人件費も増加しており、最近解雇した者もいなければ上記の要件を満たすことになります。
この場合、20万円×2人=40万円の税額控除が受けられるわけです。
当期の法人税額の20%(大企業は10%)までという上限はありますが、これはとても大きな制度です。
そもそもこの制度は、新規雇用の後押し議論から始まった制度です。
労働者が増えたならば、雇用した事業主の税金を減らしてあげようという趣旨です。
従って、上記の要件の他にもう一つ大切な要件があります。
それは、事前に雇用促進計画という手続きを踏んでおき、事業年度終了後に計画実施報告に基づき認定を受け、その報告書を確定申告書に添付するということです。
つまりは、雇用を増やす計画があり、それに基づき実際に雇用が増えたという流れが必要であり、それらは事前に国に届け出たうえで、結果についても認定を受けなさいという正にお役所的な条件があるのです。
具体的には、事前に雇用促進計画という届出をハローワークに出します。期限は事業年度開始から2カ月以内です。
そして、事業年度終了から2か月以内に計画実施報告という届出をハローワークに出します。要は当初の計画についての結果報告です。ここで、上記の要件を満たしているという結果であれば、認定を受けた報告書が交付されます。
この認定を受けた報告書があって、始めて税額控除が受けられるわけです。当然この報告書は、税務申告の際、確定申告書に添付が必要です。
なお、既に事業年度が始まっている事業者があるため、今年度に限り、事業年度開始の日が平成23年4月1日から7月31日までの事業者については、雇用促進計画の届出期限が平成23年10月31日までとなっています。つまり、3月決算法人でも、まだ間に合うわけです。
繰り返しになりますが、この制度は税額控除ですので、企業への影響が非常に大きなものがあります。また、自ら選択しなければ受けられませんし、更に事前届出が絶対条件です。結果的に雇用者数が増えなかった場合でもいいのではないでしょうか。得する可能性があるのですから、出しておくだけ出しておくのが常道と思われます。
是非、ご検討ください。
また、ハローワークへの提出については、提携の社会保険労務士をご紹介することもできますので、お気軽にご相談ください。