・短期前払費用
法人税法では、短期前払費用の損金算入という取扱いがあります。
これは、法人税基本通達2-2-14に定められているもので、前払費用であっても、その支払った日から1年以内に提供を受ける役務に係るものを支払った場合には損金算入を認めるというものです。
そもそも前払費用とは、一定の契約に基づき継続的に役務の提供を受けるために支出した費用のうち、その事業年度終了の時においてまだ提供を受けていない役務に対応するものをいいます。まだ役務の提供を受けていないわけですから、当然期間対応のもとで繰延経理すべきものなのです。
しかし、企業会計上の重要性の原則の観点からも、1年以内に提供を受ける役務に係るものを支払った場合に損金経理をしているならば、税務の面からもこれを認めようというのがこの短期前払費用の損金算入という取扱いです。
あくまで、例外規程なわけですから、当然適用にあたっての要件というものがあります。
この要件は次のとおりです。
①一定の契約に基づき継続的にその期間中に等質・等量の役務の提供を受けるものであること
②現実に支払いをしていること
③支払った日から1年以内に提供を受ける役務に係るものであること
(注)収益の計上と対応させる必要があるものについては、適用はないものとする。
以上の要件をすべて満たしている場合のみ、短期前払費用の損金算入という取扱いが受けられるのです。
例をあげると、土地建物の賃借料、保険料、借入金の利子などが該当します。
したがって、一定の時期に特定の役務の提供を受けるためにあらかじめ支払った対価である広告料金や前払いの給料などは等質・等量とはいえません。
これらは単なる前払金にすぎませんので、当然この規定の取扱いはありません。
また、期末までに現実に支払っていなければいけませんので、未払計上をしても認められません。
さらに、1年以内に提供を受けるとされていますので、例えば5年分の保証料を支払ったような場合には、1年分を損金に算入できるのではなく、すべてを翌期以降に繰り延べる必要があります。
そして、留意すべきは、通達の注書きです。
例えば、賃借物件を他に転貸しているような場合。決算対策として、家賃の前払いを行ったとしても、他に転貸して受取る賃貸料とは見合い関係にあるため、家賃の前払い分を短期前払費用として損金に算入することはできないのです。
そもそも、短期前払費用の損金算入という取扱いは重要性の原則の観点から認められているものです。つまり重要性が乏しいという観点から、課税上弊害がない範囲内で費用計上を認めようという趣旨のはずです。
上記の要件を満たしていても、会社の所得に大きな影響(短期前払費用の損金算入の取扱いを適用した結果、所得が大幅に減額された)を与えたため、否認されたという判例もあります。
安易な節税に走ることなく、また、キャッシュフローの観点からも安易な支払いはすべきではありません。