・相続税の国内財産と国外財産
相続税は相続や遺贈により財産を取得した相続人等に課せられる税金です。
基本的にはその財産が日本国内にあろうが国外にあろうが財産には変わりはありませんので、すべての財産に相続税は課せられるはずです。
では、相続人または被相続人(亡くなった人)が日本に住所を有している場合と住所を有していない場合とでは相続税に違いはないのでしょうか。
相続税を支払う相続人等(以下「納税義務者」という)は、国籍や住所を有しているか否かにより次の三つの区分に分類されます。
①居住無制限納税義務者
②非居住無制限納税義務者
③制限納税義務者
実はこの区分によって、相続税の対象となる財産の範囲が異なってくるのです。
①居住無制限納税義務者
相続等により財産を取得した個人で、財産を取得した時において日本国内に住所を有している者をいいます。
居住無制限納税義務者に該当する相続人等は、国内財産のみならず国外財産も含めたすべての財産が相続税の対象となります。
このとき被相続人の住所が日本に有るかどうかは問いません。
また、国籍についても規定がありません。従って、日本に住所を有している外国籍の相続人等が、母国で発生した相続に係る被相続人から国外財産を取得した場合でも、相続税が課せられることになります。
②非居住無制限納税義務者
相続等により財産を取得した日本国籍を有する個人で、財産を取得した時において日本国内に住所を有していないが、相続人等又は被相続人が相続開始前5年以内に日本国内に住所を有していたことがある者をいいます。
非居住無制限納税義務者に該当する相続人等は、居住無制限納税義務者と同様、国内財産のみならず国外財産も含めたすべての財産が相続税の対象となります。
この相続開始前5年以内に日本国内に住所を有していたことがあるものには、相続人等のみならず被相続人も含まれている点がポイントです。
いくら相続人等が長年日本国内に住所を有していなくても、被相続人が国内に住所を有していれば、非居住無制限納税義務者に該当してしまい、国外財産も含めたすべての財産に相続税がかかってしまうというわけです。
国籍については相続人等にのみ日本国籍という要件があり、被相続人にはありません。
③制限納税義務者
相続等により財産を取得した個人で、財産を取得した時において日本国内に住所を有しておらず、非居住無制限納税義務者に該当しない者をいいます。
制限納税義務者に該当する相続人等は、国内財産のみが相続税の対象となります。
相続開始時に日本国内に住所を有していない相続人等のうち、外国籍の者はすべて制限納税義務者に該当します。
日本国籍を有する者は、被相続人も含めて相続開始前5年以内に日本国内に住所を有していたことがない場合に限り、制限納税義務者に該当することになります。
上記の区分は贈与税の課税対象の判定とも一致します。
このように、安易に国外の財産を取得したり、国外に移転したりしただけでは、税金を免れることは出来ないように課税の強化が図られているのです。