・役員と使用人兼務役員
役員は会社から委任を受け、会社の業務を遂行することが仕事です。
様々な責任もあります。
この役員、法人税において、通常と取り扱いが異なる場面がよくあります。
たとえば、役員に対する給与。定期同額給与以外、原則としては損金不算となっています。
では、法人税法上の役員とは誰なのでしょうか?
これは、法人税法第2条15号と法人税法施行令7条に3つ規定されています。
通常の役員より、若干、範囲が広くなっています。
1つ目は、法人の取締役、監査役、清算人など
これは会社法上の役員です。つまり、株主総会で選任を受け、登記されている者をいいます。 これは間違いなく役員です。
2つ目は、法人の使用人以外の者で、法人の経営に従事している者
これは会社法上、つまり登記上役員ではないが、実質的に役員と変わらない者です。具体的には、会長、相談役、顧問などと呼ばれる人です。
ここでのポイントは法人の経営に従事しているかどうかです。
つまり、使用人として働いていない人が会長などのポストに就いている人が、様々な経営判断を行う立場にあるかどうかということです。単なる名誉職として、実際に経営にタッチしていないのであれば、役員には該当しないことになります。
3つめは、同族会社の使用人のうち、一定の要件を満たす者で、法人の経営に従事している者です。
まず、同族会社の…とありますので、同族会社でなければ該当しません。
次に、使用人のうち、一定の要件を満たす者とあります。
一定の要件は次のとおりです。
①その使用人が、50%超の株主グループに属しているか
②その使用人の株主グループが10%を超えているか
③その使用人の所有割合が5%超を超えているか
詳細は省きますが、要は、一定以上の株を所有しているかどうかです。
ここに当てはまらなければ該当しません。
最後に、法人の経営に従事しているかどうかです。
2つ目で出てきた要件と一緒です。
たとえば、創業者の子供が、その会社の使用人として働き、一定規模の株を所有していても、経営判断をする立場になければ、役員とは認定されないということです。
以上の3つに当てはめて、該当しなければ、法人税法上の役員には該当しません。
しかし、登記上の役員でなくても、2つ目,3つ目に該当した場合、役員としての取り扱いを受けますので、注意が必要です。
なお、法人の経営に従事しているとは、規定があるわけではなく完全な事実認定になりますが、経営判断の決定に参画している場合や契約や人事について権限を有している場合などが該当するようです。
もう一つ、役員には使用人兼務役員というのがあります。
使用人として会社に従事しながら、役員としての地位も有している人です。
役員部分については、通常の役員と同じ扱いを受けるため、役員部分の給与については、定期同額給与以外、原則損金不算入です。使用人分については、給与も賞与も損金となります。
ここで、また一つ法人税法で規制を設けています。
それは、役員のうち、使用人兼務役員になれない者を法人税施行令71条で定めているのです。
逆にいえば、使用人兼務役員になれるのは、使用人として常時職務に従事し、特定の役員ではないことが条件となっているのです。
特定の役員とは次の者をいいます
・代表取締役、清算人など
・副社長、専務など
・同族会社の役員のうち一定の要件を満たす者
一定の要件は次のとおりです。
①その役員が、50%超の株主グループに属しているか
②その役員の株主グループが10%を超えているか
③その役員の所有割合が5%超を超えているか
以上の特定役員に該当した場合には、使用人としては認められず、すべて役員の取り扱いを受けるということですから、使用人分の賞与についても原則損金不算入となってしまいますので、注意しましょう。
よく問題になるのが、専務などの肩書がある人です。
この規定をそのまま読むと、使用人兼務役員にはなれないように思いますが、通達で定款や株主総会などの決議で地位が付与された者と定められていますので、よく中小企業である社長の片腕の人に専務と名付けているよう場合には該当しません。