・グループ法人税制
“完全支配関係にある法人間の譲渡については、譲渡損益を認識しない”
平成22年度税制改正の目玉の規定です。一般的にグループ法人税制と呼ばれています。
グループ法人税制では、100%の支配関係にある法人間を完全支配関係と定義し、完全支配関係にある法人同士を一体ととらえて課税を行うとしています。
従って、完全支配関係にある法人間で、土地や有価証券などを譲渡して、譲渡損益が発生した場合でも、一体ととらえられますので、譲渡自体がなかったとされてしまいます。よって、譲渡損益は発生しないことになってしまうわけです。
この完全支配関係。なかなかくせ者です。
まず、資本金の金額うんぬんは全く関係なく、しかも100%の支配関係であれば、この規定が強制的に適用になりますので、除外するといった選択肢はありません。
次に、みなし完全支配関係も含まれるとしています。
例えば、B社の株をA社が100%持っていたとします。(これは間違いなく完全支配
関係です。)
次にC社の株をA社が40%、B社が60%持っていたとしましょう。
この場合、A社、B社ともにC社の株を100%持っているわけではありません。
しかし、B社はA社と完全支配関係があるため、この時点でA社とB社は同一とみな
されるわけです。
従って、A社B社合計ではC社の株式を100%持っているため、C社はA社及びB社と完全支配関係があることになってしまうのです。
これを、みなし完全支配関係と定義しています。
さらに、一の者との間に当事者間の完全支配関係がある場合の法人相互間も含まれるとも規定しています。
何だかわかりづらい表現ですが・・・。
例えば、A社がB社とC社の株を100%持っていたとします。
次に、B社がD社の株を100%持ち、C社がE社の株を100%持っていたとしま
しょう。
この場合、A社とB社、A社とC社、B社とD社、C社とE社は、当然完全支配関係
があります。
ただし、B社とC社、D社とE社はそれぞれ支配関係がありません。
もっと言えば、B社とE社、C社とD社も支配関係はありませんよね。
しかしながら、A社を頂点にみた場合、B社とC社はそれぞれ完全支配関係がある
ため、まずB社もC社もA社と同一とみなされます。その同一のグループがD社E社を
それぞれ100%支配していますので、こちらも同一となってしまうのです。
結果、A社からE社まですべて一体とみられてしまうため、例えば、B社からE社に固定資産を譲渡した場合でも、グループ法人税制の適用を受け、譲渡はなかったものと されてしまうのです。実にややこしいですね。
グループ法人税制の適用を受ける譲渡資産は、譲渡損益調整資産という名称で定義されています。
具体的には、固定資産、土地、有価証券、金銭債権、繰延資産で、帳簿価額が
1000万円を超えるものが該当します。
実務上では、一定の税務調整が必要になり、少々複雑になりますが、会計上は今までと変わらない処理をします。つまり別表調整が必要になるということです。
グループ法人税制では、譲渡取引の調整のほか、法人間の寄付についても規定しています。
つまり、法人間で寄付をしても、その寄付はなかったものとされ、もらった側ももらっていないものとされます。
これだけでは、そんなに複雑ではないように思えますが、実は親会社側で所有している子会社株式の帳簿価額を調整するという作業が発生します。(これも別表調整です。)
このように、グループ法人税ではグループ法人間でお互いに調整が必要になりますので、管理がとても重要になります。
このグループ法人税制。平成22年10月1日以降の取引から適用が始まっています。適用を受ける法人に該当するか注意が必要です。