・贈与
贈与とは、無償で他人に財産を与える契約をいいます。これは民法で規定されています。
無償とはつまりタダということです。
タダで他人に財産を与えるまではいいですが、最後に契約という文言があります。
契約ですから、お互いが承諾しないと成立しません。
つまり贈与の場合も、財産をあげる側はもちろんのこと、もらう側も承諾しないと契約が成立していないのですから、贈与は成立しないことになります。
実務では、この贈与が成立しているか否かという問題にしばし直面します。
例えば、相続が発生し、相続税の申告書を作成しているとき。
よく出てくるのが、名義預金というものです。
夫名義の預金を妻の名義に変更したり、子供名義の口座を作ってお金を移動させていたような場合に、夫が死亡し、相続が発生したとしましょう。
名義からすると夫の名義ではないため、夫の相続財産ではありません。
しかし、実際は夫の財産であり、名義だけ妻や子供になっているような場合には、名義預金として相続財産に含められてしまいます。
この場合、名義を変更したり、お金を移動させたときに、夫はお金をあげた、妻や子供はお金もらったというお互いの承諾があれば贈与が成立していたことになり、もはや夫の財産ではなくなっていますので、夫の相続財産には含まれません。
しかしこの場合、贈与税という別の問題が発生してくるので、簡単に贈与を認めてしまうとかえって税金負担が発生することもあります。
ただ、贈与税の時効は5年ですので、名義預金にしたのが、相続発生の5年以上前であれば、贈与を認めても結果的に税金を免れるということもありえます。
贈与のみならず、契約は書面でなければならないということはありませんので、口頭での承諾でも契約つまり贈与は成立します。
したがって、上記のような時効による税金逃れもありえますが、財産をあげた夫は既に亡くなっていることもあり、実務上は贈与の証明をするために契約書などの書類の提示を求められます。
ちなみに贈与税には、①暦年課税と②相続時精算課税の2つあります。
①暦年課税は、毎年1月1日〜12月31日の1年間を単位として、財産をもらった側に、その財産の金額に応じて、10%から最大50%の税金がかかります。
年間110万円までは税金がかからないことになっていますが、税負担としてはかなり大きいです。
②相続時精算課税は、贈与の際に贈与税を支払っておき(2500万円までは税金がかかりません)、その後相続が発生した場合、相続財産にその贈与財産を合計して相続税を一旦計算し、その相続税から贈与の際に支払った贈与税を差し引いた税金を実際には支払うという方法です。
この方法は①の暦年課税との選択制で、一度選択した場合には①の暦年課税に戻ることはできません。
この方法の特徴として相続発生時に相続財産に贈与した財産を戻しますが、戻すときの金額が贈与のときの金額で戻します。
従って、非上場の自社の株式など値上がりが見込まれる財産については有効な方法です。