・清算所得課税の廃止
平成22年度の税制改正で清算所得に対する課税制度が廃止されました。
この改正は平成22年10月1日以降適用になります。
つまり既にこの規定は開始されているのです。
そもそも、清算所得課税というのは、簡単にいいますと、会社が解散した場合、会社を整理していくうえで様々な手続きを行い、最終的に残った財産について税金を支払うといった制度です。
通常の会社は、各事業年度での所得(儲け)を計算し、この所得に対して税金がかかります。つまり損益課税です。
一方で、会社が解散した場合は、会社は営業活動を行わなくなるとともに、様々な財産を現金化し借金などの債務を支払って、最終的に会社が消滅します。
従って、所得(儲け)に対して税金をかけるわけではなく、最後に財産が残った場合には、その財産(清算所得)に税金をかけようという発想でした。(平成22年9月30日までに解散した場合)
しかし、前述したとおり、平成22年10月1日以降に解散をした場合には、清算所得という発想が廃止され、清算所得に対する課税制度が廃止されました。
では、今後はどうなるかというと、解散した場合にも通常どおりの所得(儲け)に対しての税金をかけるという方法に変わったのです。
会社が解散した場合には、営業活動が出来なくなるわけですから、通常は儲けが出るわけでないので、課税方法が変わっても、一見、何の影響もないように思われます。
しかし、実務上では問題があるのです。
例えば、会社の借入金が膨大になり返済不能となって、やむを得ず解散に追い込まれてしまったとします。
解散後、清算の手続きに入り、借入金についてその返済を免除されたとしましょう。 その場合、会社の処理としては債務免除益という収益が発生してしまいます。
従前の清算所得課税の場合、債務免除益が発生しても、最終的な財産がなければ税金は発生しませんでした。
しかし、今後は債務免除益も所得となりますので、このままでは税金が発生してしまうことになってしまうのです。
これでは、スムーズに清算をすることが出来なくなってしまうため、期限切れ欠損金の損金算入という新たな規定をつくりました。
欠損金の損金算入というと、青色欠損金の損金算入が頭に浮かぶと思います。
青色申告の場合、所得が発生しても、過去7年前までの欠損金と相殺できるという制度です。
解散後の清算時の債務免除益は多額となる場合が多く、過去7年分の欠損金ではまかないきれないことがほとんどです。
従って、7年前以前の欠損金つまり切り捨てられてしまった欠損金も含めて債務免除益と相殺できるようにするというのが、この期限切れ欠損金の損金算入という制度です。
会社更生法などの適用を受け債務免除益が発生した場合に、この期限切れ欠損金の損金算入を認めるという規定は以前からありましたが、今回一般的な解散・清算についても適用が認められることになりました。
結果、今回清算所得課税が廃止され、通常の所得課税に変更となりましたが、影響はあまりないとも考えられます。
しかし、期限切れ欠損金でもまかないきれない債務免除益については税金が発生してしまいます。
また、最終的に解散に追い込まれた会社については、その直前まで、債務超過を表面化させないために、仮装経理つまり粉飾決算を行っている場合(架空資産の計上など)も多いようです。
この場合、欠損金が表面化していないため、まずは仮装経理に基づく過大申告として、修正後の確定申告を一度提出し、欠損金を表面化させた後で、債務免除益を受け、期限切れ欠損金の損金算入の規定を受けるといった手続きが必要になると思われます。
今回の清算所得課税の廃止については、完全支配関係の子会社を清算した場合、親会社が子会社の繰越欠損金を引継ぎという規定が創設されたり、親会社が所有の子会社株式について、子会社株式消滅損(費用)を計上できず、資本金等の額から減額するといった規定も設けられています。