・消費税の仕入税額控除の改正
平成23年度税制改正の一部が切り離された所得税法等の一部を改正する法律が、平成23年6月30日に施行しました。
その中に、消費税の仕入税額控除に関しての改正が含まれています。
この改正、実務上は大きなものと言えます。
なぜなら、仕入税額控除が100%受けられなくなるからです。
さらに、今までの会計処理のままでは、納める消費税が高くなるかもしれません。
具体的な改正の内容としては、課税売上高が5億円を超える事業者について、仕入税額控除についてのいわゆる95%ルールが使えなくなるというものです。
消費税の計算は、課税売上に係る消費税から課税仕入に係る消費税を控除した金額を納めるという仕組みになっています。
ここで、課税仕入に係る消費税は全額が控除できるのではありません。
課税仕入自体を①課税売上のみに対応するもの、②非課税売上のみに対応するもの、③課税売上と非課税売上に共通対応のものに区分をし、①は全額控除、②は控除なし、③は課税売上及び非課税売上をもとに計算される課税売上割合に応じた分しか控除ができないという計算方法が原則です。
しかしながら、課税売上割合が95%以上の場合には、この原則計算の必要はなく、①も②も③もすべて全額が控除できるという95%ルールが存在していました。
不動産業、金融業、医療機関など非課税売上が多い業種でない一般の事業者は、そもそも非課税売上が少ないため、課税売上割合が95%以下となることがほとんどありません。
従って、今までは課税仕入自体を細かく区分せず経理処理をしていても、結果的に全額控除を受けることが出来ていたのです。
しかし、今後は課税売上高が5億円超の事業者については95%ルールが使えなくなります。
非課税売上が少ないと言っても、預金の利息や住宅の貸付など非課税売上となるものはいくつかあるため、課税売上割合が100%となることもまたほとんどありません。
今までのように課税売上割合95%から100%の間であっても原則計算が必要なのです。
つまり、日頃経理処理をするその都度、区分経理が必要になってくるわけです。
仕入税額控除の原則計算には上記のような個別対応方式の他、一括比例配分方式があります。一括比例配分方式はすべての課税仕入について、課税売上割合に応じた分のみ、仕入税額控除ができるというものです。
一般的に、課税売上割合がよっぽど低くなければ、個別対応方式の方が有利になります。
なぜなら、課税売上のみの対応のものは全額控除が可能だからです。
しかし今後、経理処理をするその都度区分経理をしていない場合、この個別対応方式は使えず、一括比例配分方式しか使えなくなります。個別対応方式が使えるのは、経理処理をするその都度区分経理をしていることが前提条件だからです。
結果、納める消費税が今までと比較して大幅に増える可能性があります。
この改正は平成24年4月1日以後開始する課税期間から適用されます。
つまり、3月決算法人については来期早々から適用開始となるのです。
課税売上高が5億円を超える事業者は数多くあります。
今から実務レベルでの対応が必要です。
なお、課税売上高が5億円以下の事業者については今後も95%ルールが使えます。