教育資金の一括贈与
・教育資金の一括贈与
平成25年度税制改正が平成25年3月29日に成立しました。
この中で、教育資金の一括贈与に係る非課税措置が新しく創設されました。
日本の教育費は、私費の負担割合が大きく、家計に占める負担割合も大きくなっています。
一方で、個人金融資産の約6割を高齢者が保有している現状があり、孫などのためなら支援をしたいと思っている高齢者は数多くいます。
そこで、祖父母世代から孫などの世代への資産移転を促進し、将来必要となる教育資金の早期確保を図り、親世代の教育資金の負担軽減のために、教育目的に使途を限定した資金の生前の一括贈与については、贈与税を非課税とするというのが本制度の目的です。
【概要】
受贈者の教育資金に充てるために、その直系尊属が金銭等を拠出し、金融機関等に信託等をした場合には、受贈者1人につき1500万円までの金額に相当する部分の価額については、贈与税を課さないこととされます。
【教育資金】
教育資金とは、学校等に支払われる入学金その他の金銭と学校等以外の者に支払われる金銭のうち一定のものとされています。前者は、学校等に支払われる入学金や授業料、後者は、予備校や学習塾等が該当しますが、習い事などどの範囲までが対象になるかは今後明らかになります。
【適用期間】
本制度の適用期間は、平成25年4月1日から平成27年3月31日までの間に拠出されるものに限られる、いわゆる時限立法です。
【贈与者である直系尊属】
贈与者である直系尊属とは、受贈者の実父母、養父母、祖父母、曾祖父母が該当し、年齢制限はありません。
【受贈者】
受贈者は、実子、養子、孫、曾孫が該当します。また、受贈時において30歳未満という年齢制限があります。
【非課税限度額】
本制度による非課税限度額は1500万円です。これは受贈者1人つき1500万円ですので、仮に祖父と祖母からそれぞれ1500万円(合計3000万円)の贈与を受けたような場合でも、非課税となるのは1500万円までです。なお、学校等にのみに支払われる場合には1500万円までですが、学校等以外の者(予備校等)への支払については500万円までとされています。
【金融機関等】
本制度は教育資金を金融機関等に信託する必要があります。ここでいう金融機関等とは、信託会社、信託銀行、銀行及び金融商品取引業者のうち第1種金融商品取引業を行う証券会社をいいます。
【非課税手続】
受贈者が、本制度の適用を受けたい旨等を記載した教育資金非課税申告書を、信託等がされる日までに、金融機関等を経由して、受贈者の納税地の所轄税務署長に提出することにより本制度の適用が可能となります。なお、実際には金融機関等が受贈者に代わって手続きをすることになるため、受贈者本人が申告する必要はありません。
受贈者は、本制度を利用して払い出した金銭等を、教育資金の支払に充てた場合、それを証する領収書等を、その支払日から1年以内に金融機関等に提出しなければなりません。金融機関等はその確認をし、受贈者の納税地の税務署長に調書を提出することで非課税が維持されます。
受贈者が30歳に達した時点で残額がある場合には、教育資金として使用されなかったこととなり、この時点で贈与者である直系尊属から贈与があったものとして、贈与税が課税されます。
【3年以内の生前贈与加算との関係】
相続があった場合、相続開始前3年以内の生前贈与財産は、相続財産に加算されますが、本制度による教育資金の一括贈与は非課税財産という扱いのため、3年以内の生前贈与財産から除外されます。
現状でも、親などの扶養義務者から生活費や教育費に充てるために、その都度支払われるものは非課税とされています。しかし、前もって一括で贈与する場合には贈与税の対象とされています。その点、本制度は、金融機関等を通しての手続きにはなりますが、まとまったお金を前もって贈与しても非課税となるという点で違いがあります。